うちの子がお医者さんに行くまで

13歳(取材時)・男の子・ADHD治療経過 約7年

“努力は実る”と信じられるようになりました

ADHDの治療をスタートして7年目を迎えた隼人くん(仮名・中学1年生)。
しばらく通院を中止していましたが、中学進学後、忘れ物が多く、友だちとの信頼関係も崩れかけていたときに通院治療を再開。専門医と家族のサポートもあり、勉強もやれるところから頑張るようになりました。
また、忘れ物をしないようメモを取るなど、工夫する力もついてきたそうです。

ご紹介の症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

ご監修:ハロークリニック 院長 小出 博義 先生

先生からのアドバイス

“手のかからない子”と、症状を見過ごしていた幼少期

Q. 小さい頃はどんなお子さまでしたか?

隼人は、友だちと遊ぶよりひとり遊びが好きでした。電車のおもちゃで遊んだり、4歳年上の姉とままごとをしたり・・・。とにかく大人しく、手のかからない育てやすい子でした。ただ、生後一ヵ月でウィルス性脳炎にかかって20日間入院したので「発達が遅れるのでは」という不安はありました。

幼稚園に入ったとき、その不安を先生にお伝えすると「ほかの子との違いはなく、問題ない」と言っていただきました。でも、家での様子を見るたびにこの子は本当に大丈夫なのかな、と思うことはありました。いつもボーッとしていて、食事中はテレビに気を取られて進まないことも多かったのです。「早く食べたほうがいいんじゃない?」と促してはじめて食べ始めることはしょっちゅう。3歳下の弟と兄弟げんかになると、口では勝てないので暴力を振るうこともありましたし、「僕はどうせバカだから」と開き直ることもありました。当時、私は小児科に勤務しており、ADHDに関する知識はある程度あったので、隼人もADHDではないかと疑ったこともありましたが、誰からも指摘されなかったので「思い過ごしだろう」と、病院に行くことは考えませんでした。

Q. 受診しようと思ったきっかけは何ですか?

小学1年のとき、担任の先生に「隼人くんは、ほかの子とちょっと違うんですよね、何かは分からないけど」と言われたことです。確かに隼人は、ボーッとしていて何を考えているのか分からないし、殻に閉じこもっているような気がしていましたし、ほかの子よりテンポが遅いことも気になっていました。そこで、発達障害の専門家である 小出先生に診察していただくことにしました。

ADHDは早めに治療することが大切と聞いており、治療て症状が改善された患者さんも見てきたので、病院に行くことに抵抗はありませんでした。

発達検査を受けたのは8月。不注意優勢に存在するのADHDと診断されました。そのときは正直、ホッとして、「忘れ物が多い、注意力がないのは私のしつけのせいかな、子どもの性格かな」という葛藤から解放されました。

自分の気持ちを表現するようになりました

Q. 治療後、変化はありましたか?

授業中、手を挙げて発言するようになったり、「勉強は難しいけど部活は頑張りたいな」と自分の気持ちを表現するようになりました。嬉しかったのは、集中力が増し、のみ込みがよくなったことです。学習レベルも上がりました。毎日の努力が実るという経験は何よりの学ぶ意欲となりました。

家族も変化に気づいており、姉は、空気が読めるようになったと感じていたようです。それまでは自分のことしか考えなかったのに、姉の具合が悪いとき、「大丈夫?」と気にかけてくれたのだそうです。余裕ができたのかもしれませんね。

受け身だった友人関係も大きく変化しました

Q. 友だち関係も、変わりました?

以前は、誘われたらついていく、という受け身の関係でしたが、今はじゃれ合ったり、冗談を言い合ったり、と交流できるようになっています。「集団生活ができないのでは」「引きこもりになったらどうしよう」という不安は今はもうないですね。

先生からもできなかったことを責めるのではなく、できたことを褒めて、本人の気持ちを高めてあげることが大切」と言われました。また、共感したり、姉弟で協力し合って「やればできる」と自信をつけてあげるように、とのアドバイスもいただきました。

隼人は何でもやり始めるまで時間がかかるので、宿題をするときなどは姉と弟に協力してもらい、隼人と一緒にやってもらいました。何かを学ばせたいときも、姉弟を巻き込むことは多かったですね。

Q. 将来について話すことはありますか?

野球が好きなので、野球に携わる仕事をしたいようです。

中学校で所属している野球部は、地区大会で優勝という強豪です。そんなチームでレギュラーとして試合に出場していることは自信になっているようです。そこを生かすことができたら、と思っています。

以前は「隼人は将来社会でやっていけない」「いずれ、友だちとの信頼関係も崩れてしまう」と不安に思っていました。でも、早い段階から継続して治療を続けたおかげで、症状は大きく改善されました。中学校に入ってからも、お友達と同じように学校生活を送ることができてよかったと思います。

先生からのアドバイス自信をつけ、本来の能力を発揮できるよう、家族と医療支援でサポート

ハロークリニック
院長
小出 博義 先生

ADHDは、不注意優勢に存在する症例より多動・衝動性優勢に存在する症例の方が問題視されています。しかし、後者の症状は小学生のうちに9割程度が放っておいてもおさまるのに対し、前者の症状は5割以上が大人になるまで続きます。そのため、大人になってから自信を失ったり、人間関係を損なうなどし、社会生活が困難になるケースが多く見られます。そうならないためにも、親御さんが早い段階で障害に気づき、適切な治療で二次障害を防ぐことはとても大切です。特に集中力がない場合は、普通の知能レベルであっても、集中できないために勉強嫌いになって自尊心を失い、不登校やうつなどを引き起こす場合が多いので、見過ごさないよう注意していただきたいと思います。

隼人くんの場合は、生後一ヵ月で痙攣を起こし、後頭部に瘢痕(きずあと)が残ったので、知能の遅れを懸念しました。しかし、本人の頑張りと家族のサポートで、幼少時は症状がそれほど目立たなかったようです。ただ、小学校に入ると、集中力が持続できない、忘れ物が多い、といった注意欠陥が問題となりました。その後診断、治療を開始しました。

こうした治療が目指すところは、ADHDをもつお子さんが本来の能力を十分発揮できるよう、自信をつけてあげることです。本人が”能力を十分発揮すれば、みんなと同じようにできるんだ”という確信が持て、将来問題なく普通に生活することができるからです。

隼人くんの能力を惜しみなく発揮することができれば、社会人としてもスムーズに生活を送れます。そして今、その確信を本人もご家族もそして私も持っているのです。確実にゴールにたどり着けるよう、一度できたことや覚えたことを保持できるよう、これまで同様、ご家族や周囲の方々のサポートと、そして当面は治療を継続して医療支援を行っていきたいと

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