治療経験者の声

実際に大人になってからADHDと診断され、がんばっている経験者の例をみてみましょう。

Aさん(50代,女性)の場合

子どもの頃はものすごいお転婆で、男の子とも喧嘩してました。運動も大好きでしたね。あと、忘れっぽくて、学校でたくさんプリントをもらっても、それをもらったことも忘れてしまうんです。学校の机や鞄、ロッカーに入れっぱなしにしてしまっていました。学校にランドセルを忘れて帰ったこともあります。興味がないときは、何も聞かないでぼーっと外を見てたりしたので、ずっと、規則の守れない自分勝手な子だって言われていました。
ただ、いつも明るくニコニコしてて、友達とも仲良くできてるように見えてたらしく、うちの親は私がいろんなことで困っているってことに全く気がつかなかったみたいです。

今はホームヘルパーの仕事をしています。以前から訪問時間を間違えたり、計算した時間で終わらなかったりで、他の人にとっては当たり前のことがなかなかできなくて、「自分は何か違うかもしれない」と思っていました。
仕事で発達障害の人たちと関わることもあるので、資料を見たりしているうちにADHDのものを見つけて、読んだら「自分はこれじゃないかなあ」と思うようになりました。
それで、インターネットで見つけた病院で相談したら、ADHDと診断されました。 ADHDの診断を受けたときは、最初にホッとしました。子どものころからずっと、周りの人や家族には「これはできるのにあれはできない。ただ努力が足りないからだ」と言われ続けていたからです。
それからも病院に通っていますが、先生との会話のなかで「どうしたらいいのかなあ」と自分で気づいてきたことがたくさんあります。診断を受けて納得したし、診断を受けることによって「じゃあこうしよう」と先に一歩進む助けになったと思うので、私は診断を受けてよかったです。

Bさん(40代,男性)の場合

私は小さいころは、山の中や田んぼを走り回ったりして、よく怪我をしていましたね。人と話をしていても、途中でころころ話が変わったり、新しいもの、珍しいものを見つけると興味をもってすごく集中するようなところがありました。でも夏休みの宿題なんかは最終日に急いでやって、残りは始業式に友達に写させてもらったりして、それで毎年「今年はやろう、今年はやろう」と計画を立てるんですが、最後までやり遂げることができないんです。

仕事は10 回ぐらい変わりました。ある会社でイジメにあって会社を辞めたときに、時間ができたので、「昔から自分はどこかちょっと違うな」と思っていたこともあって、心療内科を受診しました。そこでは強迫性障害とうつだと言われまして、「じゃあ今気分が沈みこんで辛い状態なのでカウンセリングを受けさせてください」といってカウンセリングを受けました。カウンセラーの先生に症状を話したところ、「ADHDって知ってますか?」と言われました。それから専門のお医者さんを紹介してもらい、そこで何回か検査を受けて、ADHDと診断されたんです。

私は頭の中がいつも忙しいんです。もう本当にいっぱいいっぱいでがんばってるのに、周囲の人から見ると根性がないように見えてしまうらしくて、「お前は結局辛抱が足らないからそういうことになるんだ」と言われていたんです。でも、ADHDと診断されて、「これでやっと認められた」と思いました。ずっとおかしいと思っていたことを解決できる道筋がやっと見つかったんだ、と思ってちょっと喜びましたね。まだまだいろいろこれからですが、がんばっていこうと思います。

監修:
奈良県立医科大学看護学科 人間発達学 教授 飯田 順三 先生
東京医科歯科大学 精神科 非常勤講師 市川 宏伸 先生
名古屋大学大学院医学系研究科精神医学・親と子どもの心療学分野 教授 尾崎 紀夫 先生
社会福祉法人恩賜財団母子愛育会 愛育研究所 愛育相談所 所長
齊藤 万比古 先生
こころとそだちのクリニック むすびめ 院長 田中 康雄 先生
一般社団法人 日本うつ病センター(JDC)理事長 樋口 輝彦 先生
東海大学医学部専門診療学系精神科学 教授 松本 英夫 先生