医師からのメッセージ 市ヶ谷ひもろぎクリニック 理事長 渡部 芳德 先生

ADHDは、ご本人の努力不足ではなく生まれもった素質です。
治療は、その素質を最大限生かしつつ、
社会に適応するためのお手伝いだと考えています。

渡部 芳德 先生

ADHDについて

社会生活でトラブルや困りごとを抱える背景には、ADHDが隠れている場合も

電車の網棚に荷物を置き忘れたり、いつも打ち合わせに遅刻したり・・・・・・。こうした行動をつい、周囲の人は本人の努力不足や怠けではないかと考えがちです。しかし、このようなトラブルや困りごとの背景にはADHDがある場合もあり、それは、子ども(小学生)のころからもっている“素質”の1つだと私は考えています。 続きを読む

社会が高度化した現代では、判を押したように、「コミュニケーション能力が高く、何でもバランスよくこなす人材」が求められるようになりました。
そのため、活動的、行動的で、衝動的な部分もあるADHDの方は、生きづらさを感じているのではないでしょうか。しかしADHDの方のなかには、話題が豊富で、人の心を引きつける天賦の才をもつ方も大勢います。社会生活を送るうえでは困る場面もある反面、優れた才能が役立つ場面も多々あります。そういった両面の特性があるのをご自身が知ることはとても大切だと思います。

ADHD患者さんの困りごと

「これができない」、「あれができない」と周囲から厳しく指摘されてしまうと、ご本人はびくびくしてしまい、人前で発言することが怖くなってしまう場合があります。するとさらに物事がうまくいかなくなり、その結果、ADHDの二次的な問題として、不安が強くなったり、うつの症状が出たりすることがあります。 続きを読む

不安やうつの症状がずっと続くと、もともとの原因が何かわからなくなってしまいます。そのため、少し前までは「最近、気分が落ち込みがちです」と、ご自身でうつを疑って受診する方が多かった印象があります。しかし最近は、メディアやインターネットなどで情報が得られることもあり、うつの症状が出始めた段階で「ADHDが原因で困っています」と受診される方が多くなりましたね。

不安やうつのような症状があり、“ひょっとして自分はADHDかもしれない”と感じている場合には、専門の医療機関を受診することをお勧めします。そして診察や検査結果から、日常生活でなんとなく感じていた“困りごと”を再確認すること、そして自分の特性を知ることが大切だと思います。

診断について

診断を受けることで、新たな一歩を踏み出すきっかけに

ADHDだと診断をされることで、「努力不足のせいじゃないんだ」、「もって生まれた素質が根本にあったんだ」という思いをもたれる方が多いようです。 続きを読む

診断を受けた後、ご自身で周囲の人に「ADHDだと診断を受けた」と報告した方の例では、生活環境をともに改善していくきっかけになったというケースもありました。

ご自身がADHDだと認識することが、“トラブルを減らしていきたい”“環境を改善していきたい”といった、新たな一歩を踏み出すきっかけにつながると私は考えています。

治療について

検査結果のスコアを示しながら、患者さんと一緒に今後の治療方針を決めていく

私の場合、患者さんに検査結果をお示ししながら、治療が必要かどうかも含め、相談して治療方針を決めていきます。治療を行う場合は、家庭・職場の環境調整などの心理社会的治療と併せて、お薬による治療も実施することが多いです。お薬による治療は、一定期間継続してみて症状の改善が認められれば、そのまま継続していきます。 続きを読む

治療のスタート時には、診察でわかった“生活で困っているところ”に気をつけるよう伝えて、患者さんとともに治療を進めていきます。

もちろん医療機関によって治療方針は異なりますが、私の場合は、患者さんに寄り添いながら、困難な状況を一緒に改善していくことを心がけています。

治療を受けた患者さんは、安心感を抱く場合が多い

心理社会的治療やお薬を用いた治療を組み合わせた適切な治療を受けることで、“忘れ物が少なくなった”“ダブルブッキングをしなくなった”“人の話が聞けるようになった”などという声をよくお聞きします。 続きを読む

今まで困難に感じていた状況が改善されると、患者さんの生活に安心感が生まれることが多いようですね。

周囲の方へ

ADHDの方の特性をあるがままに受け入れて、
“一緒に困難な状況を改善していく”という姿勢が大切

ADHDについて勉強する

ADHDの特性を知らないと、ADHDの方のことを、どうしても「もともと怠け者だから」とか、「また話を聞いてない・・・」などと捉えてしまいがちです。ご家族だと特にそう感じてしまうのかもしれません。 続きを読む

周囲の方に求められるのは、“ADHDにはこういう特性がある”ということを勉強する姿勢です。最近は、ADHDについて勉強できるような小冊子やホームページがたくさんあります。それらを見ながら一緒に話し合うだけでも、ADHDの方への理解が深まるかもしれません。

同じ目線、気持ちで寄り添う

ADHDの治療を受けている方に対しては、周囲の方はアドバイスするという視点ではなく、症状をあるがままに受け入れて、一緒に困難な状況を改善していくという姿勢で接することが大切です。 続きを読む

「ここ、よくなったね」と周囲の方が好意的にみてくれると、ご本人も安心します。「今、がんばって、困った部分を改善していこうとしているんだよね」とわかってあげるだけでもよいかもしれません。ADHDの方と同じ目線、気持ちでコミュニケーションを取ることを心がけるとよいでしょう。

欠けている部分を補う

周囲に集中力があってリマインド役に向いている方がいるのであれば、受診する日時や薬を飲む時間をリマインドしてあげるとよいかもしれません。 続きを読む

本人の足りない部分(欠けている部分)を補完することもADHD治療の助けになります。