何をしてもうまくいかない

ご紹介の症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

気持ちが前向きになって " ほどよく " 頑張れるようになりました

三浦さん(仮名)の場合 30代女性 (ADHD治療経過 約1年)

30代女性

自分に自信が持てず、何をしてもうまくいかないと、将来に不安を感じていた三浦さん(仮名、30歳代)。
ADHDの診断を受けたことで自分の特徴を理解し、治療によって少しずつ自信を回復しています。
気持ちが前向きになって、健康を気づかう余裕も出てきました。

何をしてもうまくいかず、どんどん自信を失っていった

Q.精神科を受診されたきっかけはなんでしょうか?

仕事も結婚も長続きせず、これまでずっと不安定な人生を送ってきました。何をしてもうまくいかなくて、どんどん自信を失って、これから先の人生もだめなんじゃないかと漠然とした不安感を持つようになりました。
最初に受診した精神科では、うつの症状があるということで、抗うつ剤を処方されました。けれど、その病院が遠かったのと、妹が受診しているこちらの病院の先生が話しやすい方だと聞いて、現在の病院に転院してきました。

Q.ふだんの生活ではどのような症状に困っていましたか?

結婚生活で困ったのは、夫に「これを買っておいて」と頼まれても、ほかの日用品や食料品を買っているうちに、頼まれた物をすっかり忘れてしまうことでした。ひどい時はそれが1週間くらい続き、ついには夫もあきれて、「自分で買うからいい」と言われたりしました。郵便物の投函や携帯電話料金の支払いなども、しょっちゅう忘れていました。
メモを書いたり、直接手にマジックで書いたりしても忘れてしまうんです。できる時とできない時の差も激しかったと思います。
自分で時間を決めて、家事を毎日きちんとこなすということも難しかったですね。頑張ってはみるのですが、夕飯だけは作るとか、何か1つこなすのがやっとでした。そのせいか、いつも気分がもやもやしてストレスがたまり、お酒やたばこにすごく依存していました。

Q.職場ではどのようなことに困っていましたか?

自分でも理由はわからないのですが、朝起きられず、たびたび遅刻していました。仕事中は、大事な書類が見当たらなくなることがよくありました。書類を片付けようとしている時に別のことを言われると、そちらに気を取られて、今やっていたことを忘れてしまうんです。作業の流れの中で、違う情報が入ってくると、注意がそれてしまうんですね。
セルフのガソリンスタンドに車の給油に行った時にも、それで失敗をしたことがあります。給油が終わって給油口のキャップを締めようとした時です。「お釣りをお取りください」と、アナウンスが流れた瞬間に気持ちがそちらにいってしまい、キャップを置き忘れたまま運転して帰ってしまったんです。そういうことを繰り返すうちに、だんだん自分に自信がなくなっていきました。

ADHDと診断されて自分の特徴を知りすっきりした

Q.子供のころにADHDと思われるような症状はありましたか?

やはり忘れ物が多かったですね。前日にちゃんと準備をしていても忘れるんです。忘れないようにと玄関に用意しておいても、素通りして学校に行ってしまって、がっかりしたこともあります。
ちゃんと宿題をやったのに、持っていくのを忘れたこともよくありました。せっかく頑張ったのに先生にしかられて、悲しいし悔しかったですね。でも、自分ではなぜそうなるのかわからなくて、そそっかしい性格なんだと思っていました。
また、離れたところから呼ばれたり友達を見つけたりすると、目の前に障害物があっても、よく確認せずに走り出してしまうので、しょっちゅう転んだりつまずいたりしていました。

Q.ADHDの診断を受けた時はどのようなお気持ちでしたか?

ADHDのことをまったく知らなかったので、そんな病気があることに驚きました。同時に、病気の特徴を知ったことで、それまで困っていたことが「あれもそう、これもそう」と全部つながって、雲が晴れたように頭がすっきりしました。
思えば、自分が困っていることが、ADHDの症状だと気付けないから辛かったんですね。忘れ物をしない、遅刻しないなど、みんなが当たり前にやっていることができなくて、自分は怠けているんじゃないかと思っていたのです。
ADHDと診断されて悲しい気持ちになる方もいらっしゃると思いますが、私は、自分の特徴を知ってよかったという気持ちのほうが大きいです。

小さな変化が積み重なって少しずつ自信を回復

Q.治療を始めてからどのような変化がありましたか?

以前は、鍵をここに置こうと決めていても、なかなかできませんでした。けれど治療を始めてからは、自分で決めたことを守れる回数が増えました。また、買い物に行った時も、買い忘れをする回数が減ってきました。一つひとつは小さな変化ですが、それが積み重なって、少しずつ自信が回復してきているのを感じます。
それに、治療前は、あれもしよう、これもしようという気持ちが強かったんですが、今は無理に詰め込まないように心掛けています。何もせずに早めに眠るといったことができるようになり、遅刻せずに会社に行けるようになってきました。
それをきっかけに、身体にも気をつけるようになりました。治療前は毎日すごく疲れていて、1日が終わったらお酒を飲んでダラダラして寝るという生活だったのが、気持ちが前向きになって、健康的な生活に変わってきたと思います。

Q.もっと早く診断されていればと感じることはありますか?

子供時代は、私の遅刻や忘れ物に、親も困っていたと思います。早く分かっていれば、それが改善されていたでしょうね。それに、子供の時はそそっかしいで済んでいても、成長とともに自己評価が下がっていきます。私は 10 代から 20 代前半にうつ症状が出るようになったわけですから、もっと早く治療を受けていれば、うつにはならなかったのではないかと思います。

受診へのハードルよりも楽になれた喜びの方が大きい

Q.これからの目標はありますか?

治療前に比べて健康的な生活ができるようになったので、それを続けたいです。以前は頑張りすぎてダウンしてしまうことが多くて、毎日ほどよく続けるということが全然できていませんでした。
ある意味、治療前のほうが、ものすごく頑張っていたのかもしれません。
今は、「ほどほどに頑張る」ということができるようになったのが一番うれしいので、それを続けていきたいと思っています。

Q.自分がADHDかもしれないと悩んでいる方にメッセージはありますか?

自分もそうかもしれないと困っていらっしゃるのであれば、受診をお勧めしたいですね。周囲の目が気になって、勇気が出ないという方もいるかもしれません。でもそれ以上に、楽な気持ちになれることの方が大きいと思います。

監修:
長嶺南クリニック 院長 平村 英寿 先生

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