仕事が常に不安

ご紹介の症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

治療によって将来の見通しが立つようになりました

佐々木さん(仮名)の場合 40代

40代男性

会社で管理職として精力的に仕事をこなす佐々木さん(仮名、40 代)は気持ちの落ち込みをきっかけに受診したところ、後にADHDと診断されました。
「まさか自分が」と思った佐々木さんですが、治療によって見通しをたてられるようになり、将来に対する希望を感じるようになってきたと話します。

仕事が原因のうつだと思って受診したらADHDとの診断に

Q.精神科を受診されたきっかけはなんでしょうか?

管理職として毎日がむしゃらに仕事をしてきましたが、忘れ物や無くしもの、またスケジュール管理の面なども仕事がうまくいっているのか常に不安を感じていました。不安やストレスが高じて気持ちが不安定になったある日、自殺を考えるようになっていることに気付き、自分ひとりでは対処できないと考えメンタルクリニックを受診しました。始めは焦燥型うつと診断され、その治療をしていました。しかし、治療の過程で先生からADHDではないかというお話があり、日常生活での様子を考え合わせて、最終的にADHDと診断されました。

Q.ADHDと診断された時、どのように感じましたか?

仕事のストレスによるうつだと思っていたので、最初に自分がADHDかもしれないと聞いた時はとてもショックを受け、絶対にそんなことはないと否定していました。発達障害のひとつとしてADHDという病気があることや、どのような病気かは理解しているつもりでしたが、自分がそうだと言われるとはじめのうちはなかなか受け入れられなかったのが本当の気持ちです。

子供のころから多動や忘れものといったADHDの傾向がありました

Q.子供のころにADHDと思われる症状はありましたか?

振り返ってみると、子供時代から思春期にかけてADHDの特徴らしき行動はありました。たとえば、じっとしていることがまったくできず、動いていないと酸素を取り入れられなくて窒息死してしまう「サメ」のようだと友人たちに言われていました。学校の中でも家の中でも常に忙しく動き回っていました。
また、物をしまい込むと、それをどこに片づけたか忘れてしまうことがよくあったので、物を失くすことへの不安感を絶えず持っていました。

Q.職場ではどのようなことで困っていましたか?

働き始めたばかりの頃はあれもこれも手を付けてしまい、結局すべて中途半端になり仕事の整理がうまくいかないこともありました。また、同僚からは問題なく進んでいると言われているのに、本当に問題はないのかということが常に頭から離れず、不安があふれていました。1 日精一杯働いた後も、達成感よりも忘れ物はなかったか、予定していたことをちゃんとこなせていたかという不安の方が強くあり、家に帰っても落ち着けませんでした。
同僚とのコミュニケーションにも多くの問題がありました。会話は私からの一方通行で、相手の話を聞いて理解するふりはしますが、心の中では気にするようなことは言わないで欲しいという思いでいっぱいでした。相手の話が気になり始めると、いてもたってもいられなくなっていたからです。
とにかくこの状況から早く抜け出したいという気持ちから会話のテンポも速くなり、即答して逃げ出すという感じでした。

Q.毎日の生活の中で困ったことはありましたか?

身の回りの物を片付けることがまったくできませんでした。読書が大好きで何冊もの本を並行して読むのですが、本の整理整頓ができず、部屋の中は平積みされた数百冊の本で足の踏み場もないほどでした。
家族とのコミュニケーションも一方的なことが多く、家族の話を真摯に聞くことができませんでした。

自分を客観視できるようになり、将来の見通しがたった

Q.治療を始めてから、仕事や生活にどのような変化がありましたか?

自分が置かれている状況やこれからしなければならないことなどを自分の力で認識できるようになりました。職場や家庭では絶えずADHD症状からくる不安感やストレスを抱えていましたが、それが軽くなってきたと感じています。きっと、治療によって見通しが立つようになったことが、安心感につながっているのだと思います。結果、気持ちの面では平常心を保てるようになり、動揺することが少なくなりました。
また、家では、部屋に山積みだった本を整理して 500 冊も捨てることができました。自分に価値のあるものとそうでないものを見分けるという、整理の基本がわかるようになったのだと思います。
生活の面では、朝起きてから寝るまでの 1 日のリズムを一定に保てるようになったことも大きな変化のひとつです。
また、職場でも家庭でも、誰かと会話をする時に間をおいて返答するようになり、提案やアドバイスにも耳を傾けることができるようになりました。自分を客観視するという意味での認知機能が改善されたことから、相手を理解しないといけないという意識が芽生え、コミュニケーション能力が向上したのだと実感しています。

早めの受診、早めの治療を

Q.治療を始めて良かったと感じる点はありますか?

今は、将来というと大げさかもしれませんが、明日、明後日のことについて考えられるようになりました。今までは自分の行動を振り返ってばかりで、なかなか前に進めず不安が先行していました。
今は将来に対する希望や自分の幸せ、人生の豊かさについて考えられるようにもなりました。治療前には考えられなかったことですが、将来に対する思いにふくらみが出てきたのだと感じています。

Q.もっと早くADHDと診断されていればよかったのにと思うことはありますか?

子供の頃にADHDと診断されていたら、特に学業面が変わっていただろうと思います。自分がADHDであるということを知らなかったことで失ったものはあまりにも大きかったと思っています。

Q.同じようにADHDかもしれないと悩んでいる方にメッセージはありますか?

ADHDの方は周りから孤立していることが多いと思うので、精神的に落ち込んで孤独感を感じたり、外出しなくなったりということが始まった時はすぐに受診されたほうがいいと思います。できるだけ早く治療を始めてください。

監修:
辻メンタルクリニック 院長 辻 元宏 先生

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